入管への収容 病人放置は看過できない

(18/4/26 信濃毎日新聞 社説)

東京入国管理局が、激痛を訴えた収容者のトルコ人男性に医師の診断を受けさせず、長時間放置していたことが分かった。

診療に関する手続き文書に虚偽の記載をして、事実を隠蔽(いんべい)した疑いもある。

医療関係者からは「死に至る可能性もあった」という指摘が出ている。非人道的で、秘密主義の批判も免れない。社会から隔離された施設で、収容者が適切な扱いを受けているのか疑わしい。

東京入管は「個別事案については回答できない」としている。入管行政の秘密主義を一掃して、情報開示を進める必要がある。

トルコ人の収容者は、虫垂炎と腹膜炎を併発していた。激しい腹痛を訴えていたのに、医療の専門家ではない職員が「容体観察」として20時間以上、診療を受けさせなかった。どのような根拠で判断したのか。

収容者は都内の病院を受診し、緊急手術を受けている。その後も痛みが続いて診療を希望したのに、再び1カ月も診察を受けることができなかった。
にもかかわらず収容者の容体を記録する書類には、最後に受診した日の3日前に初めて症状を訴えたことになっていた。人命に関する問題である。事実と異なる記載をするのは言語道断だ。

不法入国や在留期間の超過などで退去を命じられた外国人を収容する施設は全国に17カ所あり、収容人員は1300人余に上る。1年以上収容されている人は300人近くおり、長期間の拘束で体調を崩す人が少なくないという。

昨年3月には茨城県内の施設でベトナム人男性がくも膜下出血で死亡している。支援者らは本人が訴えた激しい頭痛を職員が軽視した疑いを持っている。

収容者が医療を受けることができなかった事例がほかにないのか。虚偽記載の有無を含め、詳細に検証する必要がある。

茨城県の施設では、収容者が長期拘束などに抗議してハンガーストライキを実施していることも分かっている。収容されていたインド人男性の自殺も起きた。

収容施設は強制送還させるまで一時的に留め置く施設であり、刑務所ではない。収容者の人権を確保するのは当然である。

法務省は運営の透明性を確保するため、有識者でつくる視察委員会を設置しているものの、メンバーや議事録が非公開だ。これでは人権が守られているか検証できない。法務省は姿勢を根本から改める必要がある。

(4月26日)