(18/4/23 東京新聞)
東京入国管理局(東京都港区)で昨年、トルコ人男性収容者(29)が虫垂炎の手術後、患部の痛みを訴えたのに職員が約一カ月間、診療を受けさせず放置した上、診療に関する手続き文書に虚偽の発症日を記載した疑いのあることが関係者への取材で分かった。長期間、医師の診療を受けさせなかった事実を隠すためとみられる。
入管の収容者への非人道的な扱いが厳しく問われるのは必至で、虚偽記載が日常的に行われていないかどうか徹底した調査が求められそうだ。東京入管総務課の尾形茂夫渉外調整官は「個別事案については回答を差し控える」と事実関係の確認を避けた。
男性を支援する大橋毅弁護士ら関係者によると、男性は激しい腹痛を訴え、昨年六月四日に都内の病院で受診。虫垂炎に腹膜炎も併発していることが分かり、同日緊急手術を受けた。退院後、二十一日に病院で経過観察のため受診。しかし、その後も痛みが続き診療を希望したが、職員は「時間がかかる」「順番だ」と認めなかった。
男性は六月三十日、別の支援者との面会で「痛みが続くが医師に診てもらえない」と説明。支援者が入管に診療を受けさせるよう要請したが、対応しなかった。最終的に男性が入管内で診察を受けたのは七月二十四日。その後、症状は次第に治まり、大事に至らずにすんだという。
だが、七月二十三日付の「被収容者申出書」に職員は「一昨日から急性虫垂炎で手術をした腹部に痛みがあり、膿(うみ)もでている」と、七月二十一日に初めて症状を訴えたように記載していた。
男性は共同通信の取材に対し「ずっと診療を待たされており、(七月二十三日の)前々日に発症したわけではない」と語った。大橋弁護士は「虚偽記載は医師の診断を誤らせる危険な行為だ」と批判している。男性は二〇一六年十一月に収容され、昨秋に仮放免された。
◆人の命や健康軽視
〈入国管理行政に詳しい駒井知会弁護士の話〉 収容者が心身の不調を訴えてから実際に診療を受けるまで長期間得たされるのは問題だが、よく聞く話で大変残念だ。これまでにも入管が適切な医療を受けさせなかったと考えられる状況下で死亡する事例が相次いでいる。入管が人の命や健康の尊さを軽視していることの証左だが、収容者の症状を記載する用紙に事実と違うことを書くのは言語道断。人を収容する資格はない。今回の虚偽記載は氷山の一角である可能性があり、他の文書も検証する必要がある。