※ メディアが表記している「ミャンマー」とここで表記している「ビルマ」とは同一の国のことでどちらも「ビルマ民族」という意味だそうです。ビルマには130以上の民族が確認されており、ビルマ民族だけの国ではありません。「『ミャンマー』は軍事政権が名付けた国名」とビルマ難民は認識しており、私たちはビルマ難民の認識を尊重して「ビルマ」と表記・表現しています。
★ ビルマは民主化した?
ビルマの軍事政権が2011年秋に民主化運動のトップ、アウンサン・スーチーさんを開放し、その後補選を含めて2度の国政選挙でスーチーさん率いる国民民主同盟(NLD)が圧勝しました。
スーチーさんは、2019年現在、議員だけでなく閣僚になり、国政についています。
ついて数年立っていますが、彼女の手腕が国の至る所に届いているわけではありません。
日本で難民認定を勝ち取った人も、いろんな事情で日本とビルマの架け橋になりたいと、難民認定を取り下げて帰国する人もありますが、難民申請者を含む在日ビルマ人全員がいつでも帰れるというわけではありません。
ビルマ周辺国に目をやると、タイ・ビルマ国境に難民キャンプは閉鎖されずに在ります。
このことは何を意味しているのでしょう。
2015年には、ラカイン州(アラカン州)に住むロヒンギャの人たちが難民化して海を渡りはじめ、暫くの間周辺国で受け入れられないと騒動も起きました。
外国人扱いされているロヒンギャの人たちが差別され、他宗教者から排除されるいわれは、ビルマの人たちにとっても根が深い問題でもあります。
彼らの問題が少しでも改善されなければ、民主化そのものも難しいでしょう。
スーチーさんの手腕が発揮されない理由はNLDが第一党ですが、議会を握っているのはまだ軍事政権だと言えます。議員の4分の1は軍人枠だからです。これはビルマの憲法を変えていかない限り、国会議員を100%国民が選出するというふうにはなりません。議会の民主化も進めていかないと難民だけでなく国内避難民も安心して地元に帰ることはできません。
★ ビルマの軍事政権下
ビルマは135前後の民族・部族があり、一部、他の外国の民族もいます。
また、敬虔な仏教国でもありますが、民族や地域により、必ずしも仏教徒ばかりというのではありません。
言語も風習も文化も民族によってかなり違っています。
そうした多民族国家の民族性、文化をほとんど認めず、民族同士や文化の交流も認めず、統一しようとしているのが軍事政権です。
民主化を求めている人達ばかりでなく、穏やかに暮らしているが、民族性を出すあまりに弾圧されている人や民族もあります。そうした弾圧された人たちは、国 内で潜伏したり、隣国のタイに逃げ難民キャンプを形成しています。
★ ビルマの情勢:2007年8月からの国内におけるデモ (2007年8~9月)
2007年8月、ビルマ軍政は燃料費等を通常の5倍くらいに値上げしました。
そのことで、生活物資が高騰し、生活が行き詰まり、経済活動もできなくなりました。
1988年8月に民主化活動に加わった88世代(当時学生だった人が多い)が中心となり、ただ歩くだけのデモが始まりました。その後、拘束さ れた活動家もいますが、デモは徐々に参加者が増え、国内のあちらこちらに行動がなされています。
9月に入って、仏教僧(おもに修行僧といわれる若い僧)が軍政により弾圧、還俗され、拘束されるという事件が起き、僧侶の読経によるデモがあちらこちらでなされました。日本のジャーナリストが軍人によって倒れた映像はまだ記憶にあたらしいことだと思います。
★ ビルマと日本の関係
ビルマと日本は、非常に関係が深いです。
第二次世界大戦中は戦地になり、また、日本軍がビルマを占領していました。
ビルマの軍事政権はその日本軍が残していった規律や制度を継承しているといわれています。
戦後、独立してからも日本はビルマの軍事政権を認め、多くの支援をしてきました。
ODAなどをはじめとする支援は、世界中のどの国よりも日本が多いのです。
このような実態を、日本国民に知らせたくて来ている民主化を求める活動家がたくさん日本に来ています(難民申請していなくても、実質彼らはビルマに帰れな い状況であると思われます。そうした人たちも私たちは「難民」と位置付けるべきではないかと考えます)。
2006年から日本各地の入管に総計100名以上のビルマ難民が収容されました。
軍事政権下のミャンマーには強制送還できず、2007年の夏以降のビルマ国内での市民によるデモや軍政による弾圧事件が起きたことで仮放免させるしかなかったわけですが、しかし、過去の日本の難民認定者はどの国よりもビルマの人たちが多く認定されて来ています。
スーチーさんが自宅軟禁を解放され、民政移管を進められていく中で、年々ビルマ人の難民認定は少なくなってきています。しかし、上記にも示したように民主化が完全なものとなっていない以上、難民不認定や送還のための収容はなされるべきではありません。