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なんみんハウス資料室便り 13号

移住労働者と連帯する全国ネットワーク編『日英対訳 外国人をサポートするための生活マニュアル 役立つ情報とトラブル解決法 第2版』スリーエーネットワーク、2010年12月

みなさん、こんばんは。お休みはいかがお過ごしでしたか? なんみんハウス資料室室長nonomarun@オトナな深夜便 です。

今宵は、様々な人びとと寄り添うべくの、一冊を。RAFIQにはたくさんのヘルプ&相談が寄せられている毎日ですが、その際に参考にもしています。そして日本社会で暮らしながら、え?そうだったの??日本で暮らすってこんな大変なんだ!と教えてくれます。                  

移住労働者と連帯する全国ネットワーク編『日英対訳 外国人をサポートするための生活マニュアル 役立つ情報とトラブル解決法 第2版』スリーエーネットワーク、2010年12月

 第1章      入国と入管の手続き:1入国と在留資格 2更新・変更・再入国 3永住許可申請 4家族の呼び寄せ 5在留特別許可 6非正規滞在(オーバーステイ)後の帰国と再入国 7難民認定

 第2章      労働:1働き始めるとき 2賃金について 3労働時間と休日・休暇 4仕事が原因で病気やけがをしたら 5解雇・退職 6女性労働者の保護 7労働組合への加入・結成 8税金 9新たな技能実習制度

第3章      結婚・妊娠・出産・母子保健・離婚:1外国籍の方が日本で法的に結婚する場合 2妊娠 3出産 4母子保健 5離婚 6夫・恋人からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)

 第4章      医療と福祉:1社会保険 2保険のない人の医療について 3生活保護制度 4子どもの福祉・児童手当 5ひとり親になったら 6難病患者の医療費助成

 第5章      子ども:1子どもの国籍 2子どもの教育 3在留資格のない子どもの支援

 第6章      その他:1運転免許 2交通事故 3事件に巻き込まれたら 4死亡に伴う手続き

外国人が日本に入国あるいは在住するにあたってのマニュアルです。特に難民に関するところは、第1章。でも、それ以外でも日本人だと当事者あるいは関係者になってから初めて調べて知る、ということが多いので、読むだけでもとても勉強になります。事務的な手続きだけでなく、現状はこんな例もあった、役所にはこういう言い方をした方がよい、こういうことを入管や警察に言われることが多いが審査には則していないので全く気にする必要はない、など、外国人が感じる不安を払拭し寄り添うべく、細かいアドバイスが。日英対訳です。

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なんみんハウス資料室便り 12号

ジグムント・バウマン(伊藤茂訳)『自分とは違った人たちとどう向き合うか 難民問題から考える』青土社、2017年2月

みなさん、こんにちは。
なんみんハウス資料室室長nonomarun@なんと!前号は4月1日発行であった!という驚愕の事実が発覚!! です。4月もあっという間・・・きっと5月もあっという間・・・。いやいや、毎日が充実すぎたってことで!忘れられないように、発信がんばりまする!乞うご期待(と、つい自分を追い込んでしまったけど、私はそれができるヒト…たぶん(m_m))

先日、シネ・リーブル梅田で、映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』を観てきました。イギリスの貧困や格差社会については、ブレイディみかこさんの著作などで知っていたけど、こうして目の当たりにすると絶句。そしてダニエルが書き記した言葉が、そのまま日本にいる難民に当てはまり、気持ちがぐーーーっときて哀しくなってしまいました。ちょうど難民不認定取り消し裁判の傍聴の帰りだったので、さらに・・・(T_T)ダニエルがしたことを、私も同じ状況にいたら、他の人にできるのだろうか?と自問しながらの帰り道、空を見上げると星がとても綺麗でした。

                                    ジグムント・バウマン(伊藤茂訳)『自分とは違った人たちとどう向き合うか 難民問題から考える』青土社、2017年2月

第1章          移民パニックとその利用(悪用)

第2章          避難所を求めて浮遊する難民たち

第3章          強い男(女)が指し示す道について

第4章          過密状態をともに生きるための方策

第5章          面倒で、イライラさせて、不必要な、入場資格を持たない人々

第6章          憎悪の人類学的ルーツVS時間拘束的ルーツ

訳者あとがき ——解説も含めて

人名索引

著者はポーランドのユダヤ人家庭に生まれ、冷戦時代にワルシャワ大学の職を追われイギリスに移住した経歴の持ち主(イギリスのリーズ大学名誉教授)。本書の移民・難民のテーマについては、こうした彼の個人的経験が大きく関連していると思われます。

薄い本で読みやすいのですが、少し議論が込み入る部分もあり、訳者あとがき(解説)に、各章の内容とポイントがわかりやすくまとめてあるので、まずこの部分を先に読むことをおすすめします。ここでもそれに沿って、nonomarun室長が、特に日本社会と強く関わると思った第1章と第2章をご紹介します。

第1章では、日本でも衝撃が走った浜辺に打ち上げられた難民の遺体の映像にように、連日彼らの悲劇がマスコミによって流されて世間は同情のパニック状態になるも、それは一時的でやがて沈静化して見慣れた日常のひとこまとなり「無関心化」へと向かうメカニズムと、そこから世界的規模の根本的解決策を練られないままになっていく「道徳的中立化」についての警鐘。また悲惨な状況下にある難民の姿が、国内の不遇な人々にとって「下には下がいる」という安心感や不満の解消、自尊心の回復にも繋がること、しかしその姿は「悪い知らせをもたらす使者」として非難や排斥・処罰対象にされてしまうという奇妙な社会心理学的な機制に触れています。この部分は、震災や福島原発問題と繋がり、考えさせられました。

第2章も、日本社会にも大いに関係する、最近政治家やメディアが頻用する「安全保障化」。難民の悲惨な実態や難民問題を引き起こしているグローバルな要因からは目をそらせ、難民に混じった一握りのテロリスト(主に中東出身者)への対策と国内の治安・安全対策へと問題を収束・矮小化させる動き。こうした強行策を主張する政治指導者の支持率は高まり、また難民の悲劇に関心を寄せない一般市民の道徳的後ろめたさも和らぎ解消される効果があるがゆえに、この言葉はいっそう多用されていく。

6月20日の「世界難民の日」にあわせて、RAFIQでも主催イベント(2018年7月2日)を企画していますが、今年のテーマは「日本で何ができる?世界が揺れる難民問題」。世界がこんな揺れているときだからこそ、難民の状況をみることで世界の様々な根源的な問題が見えてくるのでは?難民問題を通じて様々な問題を顕在化しよう、意識しよう、行動しよう!という気持ちが込められています。本書でも難民・移民に光を当てることによって、政治家のみならず一般の人々の心理的メカニズムや社会要因が鮮明になっています。難民・移民問題だけでなく2050年には世界人口は100億を超すと言われているこの世界で、私たちはどのような共生社会(あるいは共生しない社会)を目指すのでしょうか?

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なんみんハウス資料室便り 11号

長坂道子『難民と生きる』新日本出版社、2017年3月

こんばんは。なんみんハウス資料室室長nonomarunの星座はオリオン座@今日はエイプリルフールだけど本気だよ。 です。


先日、梅田シネ・リーブルでフランス映画『未来よ、こんにちは』を観てきました。主人公の女性の凜とした生き方と心意気に共感するとともに、運命や現実を受け入れて、負った傷も含めて自分に正直にしなやかに生きていくのが、本当の強さかもな、と思った室長です。さて、この主人公は哲学の高校教師なのですが、とにかくどこにもかしこにも本があって、どこでも読んでいるし回りも読んでいるし、もうそういう場面にめっぽう弱い室長(すぐ読書熱が出る)、、、て話は置いといて。この映画の舞台であるフランスだけでなく、多くのヨーロッパ諸国では哲学を高校の必修科目にしていることは有名ですが、もうその授業風景が!モンテーニュやルソーの精神とか理論を高校生が真剣に討論している(そしてその生徒達は多民族)。…という教育の素地があってこその、今回ご紹介する「市民教育」なのかな、と思った次第。

長坂道子『難民と生きる』新日本出版社、2017年3月

欧州に長く居住する彼女が、久しぶりに日本に帰国し、「!?」と思ったこと。例えば、大荷物をもっている老婦人を助けようと、あるいはベビーカーと四苦八苦している若いお母さんを助けようと声をかけたら、慌てて断られてしまったこと。周りの通行人は全く彼女らを無視して通り過ぎていく。困っている人に手を貸すことも、また貸されることにも不慣れな日本社会。

日本社会は、家族・地域コミュニティなど自分が所属する身近なところでは人に優しく親切ですが、赤の他人には驚くほど不親切で冷淡だと、室長も海外から帰るたびに思います(赤の他人でも、それが消費者となれば親切かも)。貧乏な人を税金を使ってまで助ける必要はない、社会的弱者は自己責任。だからこそ、子どもの時から社会の「勝ち組」になるように育て上げる(何が「勝ち組」なのかもわからないまま)。

では難民が百万単位で押し寄せている欧州はどうなのか?確かに難民排斥の政策も執られつつあるけれど、筆者の感覚では、各国間にかなりの差があるにしても、一般の人々の意識の中ではこの「難民問題」は日常的なイシュー(課題)として定着しているそうです。その典型的な姿が、自宅に無償で難民を泊め、一緒に生活する人々。混雑した場でベビーカーを押す女性を「迷惑」と捉える社会と、見も知らぬ難民を自宅に迎え入れることも厭わない社会。「他者への態度」における彼我のこの違いはどこから来るのだろう?というのが、著者の最初の疑問でした。

そこから「難民と生きる」一般のドイツ人たちと、難民をインタビューし、生の声を収録したのが本書です。彼らと共に暮らし、難民認定申請を手伝ったりドイツ語を教えたり、喧嘩したり一緒に笑ったりして自立支援をしているうちに、「難民」が「マフメド」「ウルスラ」という個人の顔に、友人の顔に変わっていく。しかも彼らには、路上に寝ている難民を泊めてあげた、という単純で当然のことをしたという意識と「無理をしていない」という態度。例えば、難民と猫を留守番に残して、バカンスに何週間も行ってしまう(笑)。そして支援という一方通行ではなく、自らも一緒に成長していることを実感し、お互いがこの出会いに感謝して、それぞれの人生を歩んでいく社会。

こうした事例を通じて、著者は最初の疑問に対する答えの一つとして、「市民教育」を挙げます。市民教育とは愛国教育ではなく、「自分が社会の構成員であり、人権を享受する権利とともに、他者のものも含めてそれを擁護する義務を負うものであることを理解させるような教育。民主主義の良い点と脆弱な点を学ばせ、過去の悲劇を再び繰り返さないためにはいかに市民一人一人の意識が必要であるかを考えさえる教育。国と国の境が何度も書き換えられたヨーロッパという土地で、なんとか平和を維持していくための協調や妥協や交渉や工夫、その具現としてのEUの理念や歴史的背景と同時に、その矛盾や問題点をも学ばせ、議論させる教育」(207—208頁)。2016年末のベルリン・クリスマス・マーケットでのトラックテロ事件のあとも、人々はそこに行き続けたし、当局も禁止や制限もせず難民排除の空気が一気に膨らまなかったことに、ドイツ市民の意地と希望をみたと著者はいいます。そして「難民を支援すること」と「(自分の)日々の享楽という自由社会の宝への愛着を持ち続け、それを死守しようとし続けること。それは共に自由で寛容な世界への希求の表れであり、地続きの一貫した態度」なのだと。

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なんみんハウス資料室便り 10号

制作・編集:山村淳平、在日ビルマ市民労働組合『だまされるな!技能実習生 国家のサギに』(DVD カラー約16分)2017年 ★音声:日本語・ビルマ語

こんにちは。なんみんハウス資料室室長nonomarun@RAFIQ主催のお花見に室長もいくよ! です。

もう3月も終わり。ひゃ〜早い!! そしてバタバタの4月がやってきます。春とはいえ、寒暖の差が激しい季節。そして新生活が始まって緊張や不安、ストレスいっぱいの人もいるだろうけど、同じくらい新しい出会いや期待とドキドキもたくさんある季節。そんないろんな気持ちが空中に満ちているように感じます。とにかく、体調管理に気をつけて!

今日ご紹介するのはDVD。山村淳平氏は2017年1月に神奈川県弁護士会の人権賞を受賞され、その副賞の一部を制作費にあてて作られたのが、このDVDです(ご本人から寄贈していただきました)。貸出・上映は自由とのことなので、ご覧になりたい方は、ぜひ、なんみんハウスへ!山村氏の他のDVD・書籍もRAFIQで販売しています。

もう少し詳しく知りたい方は、なんみんハウス資料室所蔵の関連本3冊をご紹介します。

出井康博『ルポ ニッポン絶望工場』講談社+α新書、2016年7月

安田浩一『ルポ 差別と貧困の外国労働者』光文社新書、2010年6月

宮島喬・鈴木江理子『岩波ブックレット916 外国人労働者受け入れを問う』2014年12月

制作・編集:山村淳平、在日ビルマ市民労働組合『だまされるな!技能実習生 国家のサギに』(DVD カラー約16分)2017年 ★音声:日本語・ビルマ語

日本には約1万6000人のビルマ人が在住していますが、近年深刻な問題となっているのが、日本に来た実習生達に対する日本の中小企業による、人権を完全に無視した搾取労働。現代の奴隷制度とまでも言われている技能実習生制度です(ここでは触れられていませんが、留学生も同じく)。

映像の前半は、2016年3月に開かれた「ビルマ人技能実習生問題シンポジウム」から、被害にあったビルマ人実習生たちの証言があり、10代か20代前半であろう、まだ子どものようにあどけない女性達が日本で被った悲惨な体験に胸が痛くなります。ビルマ人実習生のために闘っている弁護士が技能実習生制度について「日本政府は国際貢献と言っているが、これはウソ。日本の中小企業が外国人労働者を安く使うための制度です」と断言するのが心に刺さります。後半はなぜこのような問題が起こるかということを、わかりやすく図式化して解説してあるので、この問題に初めて触れた!という方にも最適なDVDです。

日本の難民認定申請者の中には、就労・犯罪目的の偽装難民がいてそれがほとんどなんでしょ?…云々という意見をよく耳にしますが、確かにそういう方もいるのも事実。でも、そのなかにも、本来は技能実習生・研修生や留学生で夢を持って日本に来たのに、奴隷のような労働力としてこき使われて耐えられずに脱走し、借金を返すためや、帰国できないために結果的に難民認定申請をしたり、犯罪を犯すしかなかった外国人もいる、というのも事実。すぐに断定したり切り捨たりせず、それを生み出した背景や原因にもっと思いを馳せて欲しい、それは日本の制度が、私たち日本社会が、彼らを追いつめた結果かもしれないのに。と、いつも思います。

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なんみんハウス資料室便り 9号

アムネスティ・インターナショナル日本(難民チーム)編著『知っていますか?日本の難民問題 一問一答』解放出版社、2004年10月

こんにちは。なんみんハウス資料室室長nonomarun@ えっ!三日連続発信て!蝋燭は燃え尽きる前が一番輝くっていうけど、大丈夫っ!? です。

今回は、皆さんの基本的な疑問にサクッと答えてくれる図書をご紹介します。2004年発行なので、データ自体は古く、また今の国際状況は反映されていませんが、日本に関してはほとんど変わっていません(まったく、もー)。

「こんな初歩的なこと、聞いてもいいのかしらん・・」と躊躇するアナタ!「RAFIQの初級講座受けたのに、なんか基本的なこと忘れちゃったよね、あの講師の先生にとてもいまさら聞けないわ、怖っ!」というアナタ!大丈夫、このQ&Aが助けてくれます。資料室でコッソリこの本に手を伸ばしましょう。

というわけで、今回はズラっと問いのみを羅列してみました。あ、ワタシの質問がここに・・と思ったら、是非手に取ってみてね!


アムネスティ・インターナショナル日本(難民チーム)編著『知っていますか?日本の難民問題 一問一答』解放出版社、2004年10月

はじめに —難民一人ひとりの人権を守る
問1    難民ってどういう人たちですか?
問2    どんなことが理由で難民になるんですか?
問3     難民がたくさんいる国はどこですか?
 コラム1 世界難民の日 —— 六月二〇日
問4     難民と移民はどう違いますか?
問5     難民と「不法滞在者」は違うのですか?
問6     中国の日本大使館や日本人学校に駆け込んだ北朝鮮の人たちは、難民ですか?
問7     難民は日本にもいるのですか? 事例紹介1
問8     難民はなぜ日本を選び、どんな状態で来るのですか?
    コラム2 とりあえず生活できる施設はある?
問9  難民を保護する法律は日本にありますか?
問10  難民認定について教えてください 事例紹介2
問11  難民申請している間の生活はどのようなものですか?
問12  日本に難民として来た人は全員、日本で暮らせますか?
問13  難民と認められると、どんな支援を受けられますか?
問14  申請が却下された難民申請者はどうなりますか? 事例紹介3
問15  どうして収容されてしまうのですか?収容されるとどんな生活を送るのですか?
  コラム3 難民申請者の「収容」について ——日本における実態
問16  強制送還されたら、難民申請者はどうなりますか?
問17  日本で暮らしている難民の人たちが一番困っていることは何ですか?
問18  日本で暮らす難民の人たちはどのように暮らしていますか?
問19  外国ではどのように難民を受け入れていますか?
問20  難民問題を解決するにはどうしたらよいですか?
問21  難民問題に取り組む国連の動きはありますか?
  コラム4 アムネスティ・インターナショナルの難民支援活動
問22  難民の人たち(の生活)を助けるために私たちにできることはありますか?
問23  難民問題への理解を深めるために、教育現場での取り組みはありますか?
  コラム5 教育現場での取り組み
問24  日本で国内難民支援をしているNGOは?
もっと詳しく知りたい人に

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なんみんハウス資料室便り 8号

マッケンジー・ファンク(柴田浩之訳)『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』ダイヤモンド社、2016年3月

こんにちは。なんみんハウス資料室室長のnonomarun@二日連続の資料室だより発行は初めてよ。やればできるコなんだから! です。


Twitter、FBでも発信されましたが、なんみんハウス資料室の本に、事務所お当番ボランティアの方々が所蔵印を捺してくれました!なんみんハウスのロゴで作ったかわゆい判子を空色インクで。数冊ほど「あれっ 逆さまに捺してある!」てのもありますが、それは、別の日に鼻歌歌いながらテキトーに捺してた時に発生した事件で、犯人は室長です。てへ。レア物だから、是非見つけてみてね(^◇^;)                                                          

マッケンジー・ファンク(柴田浩之訳)『地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」』ダイヤモンド社、2016年3月

プロローグ ——気候変動に「投資」する人たち

第1章       コールドラッシュ ——カナダ、北西航路を防衛す

第2章       シェルが描く2つのシナリオ ——気候変動を確信した石油会社は何を目指すのか

第3章       独立国家「グリーンランド」の誕生は近い ——解けるほどに湧き出す請求、露出するレアメタル

第4章       雪解けのアルプスをイスラエルが救う ——人工雪と淡水化というおいしいマーケット

第5章       災害で利を得る保険ビジネスの実態 ——保険会社AIGと契約する民間消防士

第6章       水はカネのあるほうへ流れる ——投機対象になった「次世紀の石油」

第7章       農地強奪 ——ウォール街のハゲタカ、南スーダンへ

第8章       「環境移民」という未来への課題 ——「緑の長城」が防ぐのは砂漠化か、それとも移民か

第9章       肥沃な土地に「逆流」する脅威 ——バングラデシュからインドへの移民が後を絶たない理由

第10章     護岸壁、販売中 ——オランダが海面上昇を歓迎する理由

第11章     地球温暖化の遺伝学 ——デング熱の再来で盛り上がるバイオ産業

第12章     テクノロジーですべて問題解決 ——気候工学信奉者たちの楽観的な未来

エピローグ ——気候変動に関する、もっともつらい真実

地球が壊れれば壊れるほど儲かる地球温暖化ビジネスの実態。章立てをみただけで、もう気持ちがどんより暗くなるけど、ああ、人類ってそうだろうな、もう巨大利権の前に滅びるしかないわ・・・という諦めの溜息もでてしまう、この現実世界。今の難民危機に対してさえ、世界中が足並み揃わず右往左往している状態で、しかも政治的迫害じゃないと、明白な証拠がないと難民じゃないし!とかなんとか、私たちの国が、どーたらこーたらと、すんごい重箱の隅つつくような細かい「いちゃもん」で難民認定すらしない間に、すでに世界中のあらゆる場所で「環境難民(移民)」「気候変動難民」という新しい概念の難民が急増しつつあるのです。

けれどもその原因となっている背後には、豊かな先進国で暮らしている私たちの無自覚な強欲や消費爆発があることも思い知らされます。自分自身の消費形態や意識も考えさせられる一冊です。アフリカから地中海を渡って、イタリアのマルタ島にたどり着き、収容所に長期監禁されている難民の実態については、第8章を読んでみてください。

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なんみんハウス資料室便り 7号

ウォーレン・セント・ジョン(北田絵里子訳)『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語 』英治出版、2010年3月

なんみんハウス資料室室長のnonomarun@今日は暖かいね!何か新しいこと、始めたくなるねっ!! です。


なんみんハウスHPに、資料室所蔵リストが公開されました!! 興味がある資料を是非みにきてね〜! そして、実は同じぐらいまだまだ室長宅にあるのです。読まないと〜(汗汗) 自分が5人ぐらい欲しい。 1仕事する 2家事する 3本読む 4遊ぶ 5酒飲む 6寝る 7…… あれ、5人では足りへん。

 
今日はアメリカに第三国定住した人々と、小さなアメリカの街の住民とのルポをご紹介します。いまトランプ政策で揺れに揺れているアメリカ政治と社会。だけど、一般の人々の人生や日常生活は同時進行で進んでいる。難民が新しい国にきて、地域住民と実際にどのように共生していくのか、あるいは受け入れ側は…?ということが、あるサッカーチームを通してみえてきます。サッカーチームの根底に流れているのは、難民だとか多文化とかというより前に、人として対等に接する(当たり前のことだけど)ということかもしれません。それを可能にするのが、少年たちそれぞれのサッカーへの情熱です。 ぜひ、手に取ってみて!!

ウォーレン・セント・ジョン(北田絵里子訳)『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語 』英治出版、20103

アメリカ・ジョージア州クラークストン。人々がある日ふと気がついてみると、この小さな街に世界各国から第三国定住による難民が大量に押し寄せていました。少数派となることへの恐れや危機感から、難民を排除したがる住民や市長と行政組織。一方で、少数ですが彼らに心を寄せ支援しようとする人々。そんななか、この街に少年サッカーチーム「フージーズ」が誕生しました。少年達は生まれも人種も言語も異なります。イラク・コソボ・リベリア・スーダン・コンゴ・ボスニア・アフガニスタン・ガンビア…etc。彼らのたった一つの共通点は「難民」であること。そしてフージーズの創設者であり無償でコーチをつとめるルーマは、故郷と家族と断絶しヨルダンから移民してきたムスリム女性。すべてが異質であるこのサッカーチームは、難民ならではの紛争地脱出におけるトラウマや恐怖、家族・故郷との別れ、家庭の貧困や学校教育からの脱落だけでなく、思春期特有の問題も次々と発生します。しかしルーマは彼らにチームの規則を厳守することを一貫して要求します。それは、ルール・礼儀を守ること、厳しい練習に耐えること、そしてサッカーへの絶対的な愛情です。

練習場への妨害や住民達の偏見と排斥、言葉もわからず授業から脱落していき非行に走る少年達、崩壊していく難民家庭を、陰日向で精力的に支えながら、ルーマの厳しいサッカー指導は続き、反発していた少年達も、徐々に唯一の共通言語である英語を身につけ、チームが一丸となってシーズンの勝利へと駆け上っていきます。このように書くと、よくある青春物語のように見えますが、第三国定住・再定住や社会統合の難しさが、サッカーという身近なsportsを通じて浮き彫りにされることで、私たちにより具体的にイメージできます。著者は、『ニューヨーク・タイムズ』の記者で、多数の論文を引用し、また難民の少年達の故郷から脱出してきた事例と社会背景も丹念に取材しており、難民ひとりひとりの物語を積み重ねつつ、フージーズの誕生から成長まで追っている渾身のルポタージュです。

読みながら、あなたも時折きっと叫んでしまうはず。

「ゴー!フージーズ!ゴー!」

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なんみんハウス資料室便り 6号

アマルティア・セン(大門毅監訳、東郷えりか訳)『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』勁草書房、2011年

みなさん!!「なんみんハウスHP」…ご、ごらんになられましたかっっ!? なんかなんか、もう嬉しいやら、いやちょっと待って、本棚がスカスカに見えるけど室長の家にたくさんあるんだから!!(読めてないだけだからっ汗)とか、PC画面に向かって叫んでみたり、左右上下にあたふたしている今日この頃!


今日はノーベル経済学賞やインド最高位の「ブラト・ラトナ賞」を受賞している著名な学者アマルティナ・センの著書を紹介します。

そもそも「アイデンティティとは複数である」と捕らえ直すことによって、他者と繋がる要素はたくさんでてくるはず。難民を発生させている紛争の根本的問題についてもクリアになり、また彼らと自分の共通点を見いだすことも、より容易になるのではないでしょうか?                      

アマルティア・セン(大門毅監訳、東郷えりか訳)『アイデンティティと暴力 運命は幻想である』勁草書房、2011年

 プロローグ

 まえがき

第1章        幻想の暴力

第2章        アイデンティティを理解する

第3章        文明による封じ込め

第4章        宗教的帰属とイスラム教徒の歴史

第5章        西洋と反西洋

第6章        文化と囚われ

第7章        グローバル化と庶民の声

第8章        多文化主義と自由

第9章        考える自由

あなたのアイデンティティは何か?と問われたら、なんと答えますか?すぐさま国籍や民族を無自覚にあげる人が大半ではないでしょうか。著者が繰り返し警鐘を鳴らしているのは、まさにそこなのです。

アイデンティティが一つに固定すると、あるいは唯一のアイデンティティ(特に顕著なのが宗教・民族・国籍・性別・言語)が押しつけられると、人は簡単に好戦的となり暴力へと走り、世界中のほとんどの紛争、政治的対立、暴力事件はこれが原因である。その背景には、世界の人々はなんらかの包括的で単一の区分法によってのみ、分類できるという偏った思い込みがある—。しかし、あなたのアイデンティティはそれだけで成り立っているわけではありません。 

例えば著者は自らを「アジア人であるのと同時に、インド国民であり、バングラデシュの祖先をもつベンガル人でもあり、アメリカもしくはイギリスの居住者でもあり、経済学者でもあれば、哲学もかじっているし、物書きで、サンスクリット研究者で、世俗主義と民主主義の熱心な信奉者であり、男であり、フェミニストでもあり、異性愛者だが同性愛者の権利は養護しており、非宗教的な生活を送っているがヒンドゥーの家系出身で、バラモンではなく、来世も前世も信じていない」、そしてこれら全てが自分のアイデンティティの一部を形成しているのだ、といいます。つまり、一人の人間が同時に所属するすべての集合体それぞれが、彼に特定のアイデンティティを与えているのです。

どうでしょうか?ご自分でも一度挙げてみてください。きっともう、書ききれないほど、あれやこれやとでてくるのでは?(そのリスト、室長のと照らし合わせてみませんか?笑)

さらにアイデンティティとは、「単一的(文化や宗教)に拘束されるのではなく、複数のアイデンティティのなかから個人が理性により「選び抜く」もの」だと。つまり、個人のアイデンティティが「社会化」すると、時に、集団レベルでの対立・紛争を誘発するゆえに、集団心理に惑わされない「個人」による理性的な判断が要請されるのです。

最後に、いま声高に理想の社会の形として提唱され推進されている「多文化主義社会」とは、実はそれは「複数単一文化主義社会」なのではないか?結局は文化や伝統は一つに固定できるという、これもまたアイデンティティと繋がる固定化ではないか?(→それがまた・・・と初めの主旨に戻る)という指摘も目から鱗です。 このように、いまや常識とされている定義あるいは認識に、今一度立ち返えることによって、複雑な問題が絡み合い混然として解決の方法も見いだせないような現代社会において、人としての根本的な軸そのものを捕らえ直すことができます(こういう、水をピュッとかけられてハッとさせられる考察が室長は大好き!)。

カテゴリー: 映画

なんみんハウス資料室便り 映画編 第1号「海は燃えている」

こんばんは。なんみんハウス資料室室長のnonomarun@「資料室長」じゃなくて「資料室室長」だよ、ちゃんと舌かんでね。 です。

土曜日から公開された『海は燃えている イタリア最先端の小さな島』http://www.bitters.co.jp/umi/を、シネ・リーブル梅田で観てきました。http://www.ttcg.jp/cinelibre_umeda/結構お客さん入ってましたよ〜


さて、内容はもちろん実際に観に行っていただきたいので、詳しく触れませんが、音楽もなく、ごり押しの感動を求めるのでもなく、淡々としたドキュメンタリーです(それが良いのです)。舞台はアフリカ大陸に最も近いイタリア最南端の島ランペドゥーサ島。漁民や主人公サムエレ(13歳・この子が最高〜)の日常生活、それに挿入されるリアルな難民救助の場面。二つは交差する現実であるはずなのに、海上で保護され(生き残れた幸運な難民だけです)、そのまま島の収容センターに入れられるため、地元の人々は自分の島で何が起こっているのかさえ、ラジオを通してしか知らず、遠い国の出来事のように感じています。それは何だか日本の現実を観ているようでした。遠い国で起こっている紛争と難民の姿。でも日本にはすでに1万人を超す難民がいて、彼らは私たちの隣にいま座っているかもしれないのに。


観られた方は是非、パンフレットの購入をお勧めします。なんと、監督のジャンフランコ・ロージ監督は、日本にきて自ら渋谷でサンドイッチマンとなり、また立教大学で難民支援に関わる学生達と特別試写会を開いています。そして日本の難民受入数を聞いて驚き、「そのような態度は政治的敗北だ」と言い切っています。映画の冒頭で、難民船からのパニックになっているSOS発信に対して、イタリア沿岸警備隊から「what’s your position?」と繰り返し無線が返されます。監督が言うには、これはメタファー。つまり観客に対して「あなたはどのポジションにいるのか?」と問うているのです。だからこそ「日本で上映する意味はとても大きい」と。そしてパンフレット最後には、地中海の難民事情と、日本の難民事情が表も用いて詳細に解説されています(これ、RAFIQの宣伝にそのまま使いたいぐらい!!ちなみに、パンフレットも資料室へ置いちゃいます!)

「what’s your position?」 ひとりひとりが、この問いに答えてみませんか?

パトリック・キングズレー(藤原朝子訳)『人類に突きつけられた21世紀最悪の難問 シリア難民』ダイヤモンド社、2016年11月この本を読むと、よりこの映画の背景がわかります!! もちろん、資料室にございますとも!!カモン!!

カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 5号

坂口裕彦『ルポ 難民追跡 バルカンルートを行く』岩波新書、2016年10月

なんみんハウス資料室室長nonomarunです。


暖かくなったり春一番吹いたり、でも一気に冷え込んだり。。。屈強な(?)nonomarun室長もちょいダウン。

でも難民の方はより一層心細いだろうな。。。と思いを馳せる病床。自分に出来ることは何か?きっと皆さんも毎日葛藤されているハズ。いますぐに、誰にでもできること(そして、それはとても重要なこと)は、知ること、知ろうとすること、そして知って回りに伝えることかな…と思っています(それが資料室設立の目的の一つでもあります! ヽ(^0^)ノ押忍!)

坂口裕彦『ルポ 難民追跡 バルカンルートを行く』岩波新書、2016年10月

序章 出発

第一章 ギリシャ

第二章 旧ユーゴスラビア

第三章 オーストリア・ドイツ

第四章 排除のハンガリー

第五章 贖罪のドイツ

第六章 再会

主な参考文献

あとがき

アフガニスタンからイランへ逃れたハザラ人アリ・バグリさん一家が、ギリシャからバルカンルートを通ってドイツを目指す姿を密着同時進行ルポで紹介。各国の諸事情や難民政策により様々にルートを変えるバルカンルートですが、当時では、各国の難民移動専用列車によって、とにかく難民をドイツまで押し出そうとハイスピードで運ばれていく様子が衝撃的。一家族を追うことで、漠然と「難民」というカテゴリで見てしまいがちな人々が、「同じ生身の人間」として浮かび上がります。

また、単なるルポではなく、歴史的背景なども折り込んであり、とても読みやすくお勧めです。本書発行前に、RAFIQとも連携している「RAWAと連帯する会」主催の講演会で著者の講演を聴きました。プレゼンがとても魅力的で最後には日本の難民問題にも言及され、本書発行日を心待ちにして購入しました。そして本書あとがきを読んで、びっくりして、ホロっときたnonomarun室長でした。 新書だから読みやすいです。ぜひ読んでみてね!