カテゴリー: 書籍

なんみんハウス資料室便り 7号

ウォーレン・セント・ジョン(北田絵里子訳)『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語 』英治出版、2010年3月

なんみんハウス資料室室長のnonomarun@今日は暖かいね!何か新しいこと、始めたくなるねっ!! です。


なんみんハウスHPに、資料室所蔵リストが公開されました!! 興味がある資料を是非みにきてね〜! そして、実は同じぐらいまだまだ室長宅にあるのです。読まないと〜(汗汗) 自分が5人ぐらい欲しい。 1仕事する 2家事する 3本読む 4遊ぶ 5酒飲む 6寝る 7…… あれ、5人では足りへん。

 
今日はアメリカに第三国定住した人々と、小さなアメリカの街の住民とのルポをご紹介します。いまトランプ政策で揺れに揺れているアメリカ政治と社会。だけど、一般の人々の人生や日常生活は同時進行で進んでいる。難民が新しい国にきて、地域住民と実際にどのように共生していくのか、あるいは受け入れ側は…?ということが、あるサッカーチームを通してみえてきます。サッカーチームの根底に流れているのは、難民だとか多文化とかというより前に、人として対等に接する(当たり前のことだけど)ということかもしれません。それを可能にするのが、少年たちそれぞれのサッカーへの情熱です。 ぜひ、手に取ってみて!!

ウォーレン・セント・ジョン(北田絵里子訳)『フージーズ 難民の少年サッカーチームと小さな町の物語 』英治出版、20103

アメリカ・ジョージア州クラークストン。人々がある日ふと気がついてみると、この小さな街に世界各国から第三国定住による難民が大量に押し寄せていました。少数派となることへの恐れや危機感から、難民を排除したがる住民や市長と行政組織。一方で、少数ですが彼らに心を寄せ支援しようとする人々。そんななか、この街に少年サッカーチーム「フージーズ」が誕生しました。少年達は生まれも人種も言語も異なります。イラク・コソボ・リベリア・スーダン・コンゴ・ボスニア・アフガニスタン・ガンビア…etc。彼らのたった一つの共通点は「難民」であること。そしてフージーズの創設者であり無償でコーチをつとめるルーマは、故郷と家族と断絶しヨルダンから移民してきたムスリム女性。すべてが異質であるこのサッカーチームは、難民ならではの紛争地脱出におけるトラウマや恐怖、家族・故郷との別れ、家庭の貧困や学校教育からの脱落だけでなく、思春期特有の問題も次々と発生します。しかしルーマは彼らにチームの規則を厳守することを一貫して要求します。それは、ルール・礼儀を守ること、厳しい練習に耐えること、そしてサッカーへの絶対的な愛情です。

練習場への妨害や住民達の偏見と排斥、言葉もわからず授業から脱落していき非行に走る少年達、崩壊していく難民家庭を、陰日向で精力的に支えながら、ルーマの厳しいサッカー指導は続き、反発していた少年達も、徐々に唯一の共通言語である英語を身につけ、チームが一丸となってシーズンの勝利へと駆け上っていきます。このように書くと、よくある青春物語のように見えますが、第三国定住・再定住や社会統合の難しさが、サッカーという身近なsportsを通じて浮き彫りにされることで、私たちにより具体的にイメージできます。著者は、『ニューヨーク・タイムズ』の記者で、多数の論文を引用し、また難民の少年達の故郷から脱出してきた事例と社会背景も丹念に取材しており、難民ひとりひとりの物語を積み重ねつつ、フージーズの誕生から成長まで追っている渾身のルポタージュです。

読みながら、あなたも時折きっと叫んでしまうはず。

「ゴー!フージーズ!ゴー!」